DATE: 2009/05/28(木)   CATEGORY: 美術展レビュー
ルーヴル美術館展――17世紀ヨーロッパ絵画


少し前のことですが、ようやく行ってまいりました。
今回の目玉は何といってもフェルメールでしょう。
2007年の「牛乳を注ぐ女」、2008年の「フェルメール展」に引き続き、3年連続での来日です。大人気ですね、フェルメール!

あんまり人気が出て混雑するのは嫌なのですが(汗)、そのぶん日本で観られる機会が増えるのはありがたいです。



ヨハネス・フェルメール「レースを編む女」
作品紹介はこちら

会場入りは、平日昼でも40分待ちでしたが、そのお陰で割りと余裕を持って観ることができました。特にこの作品はとてもサイズが小さいので、混み合ったりしていては何もわかりませんからね。
2007年の「牛乳を注ぐ女」(これもサイズが小さい)は国立新美術館でしたが、人の頭越しに、物凄く遠くから眺めるしかないという切なすぎる環境でしたので・・・。オペラグラスが要る美術鑑賞って!!(涙)


さて今回は「17世紀ヨーロッパ絵画」という、かなり大雑把なくくりでしたので、テーマも展示もかなりバラバラな印象がありました。(汗)
風俗画もいろいろと展示されてはいましたが、その中で一番印象的だったのはこちら。


フランス・ハルス「リュートを持つ道化師」

ぱっと目を引く色使い。生きているかのような躍動感に、豊かな表情。
やはり、ハルスはこうした元気な風俗画が得意ですね。また今回は陽気な酒場の風景とは違って、「あえておどけている」道化師の仕事モードの顔が見えます。
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プロセルピナ


ダンテ・ガブリエル・ロセッティ「プロセルピナ」

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どこか物憂げに、不安な表情を浮かべながら、キャンバスの中から鑑賞者を振り返るプロセルピナ。その手にした赤い果実は、柘榴。
ギリシア・ローマ神話をモチーフにした、ラファエル前派ロセッティの代表作の一枚です。

冥界の王プルート(ギリシア神話のハデス)は、美しき娘プロセルピナに目をつけ、地底へ連れ去ってしまいました。プロセルピナは、ギリシア神話では「ペルセポネ」と呼ばれています。
彼女の母(豊穣の神、ローマではケレス。ギリシアではデメテル)は嘆き悲しみ、手を尽くしてようやく探し出しましたが、彼女を連れ戻すことはできませんでした。というのも、彼女がすでに冥界の食べ物を口にしていたため、地上に戻ることができなかったのです。
キャンバスに描かれた柘榴は、彼女が食したという説に基づいています。言ってみれば、禁断の果実。

なお、口にしたのが柘榴の半分だったことから、彼女は1年の半分を冥界で、残りの半分を地上で暮らすことになりました。
娘と離れている間は、母である豊穣の女神が実りをもたらさなくなったため、地上に「季節」が生まれたと言われています。(春夏はプロセルピナが地上にいる期間、秋冬は冥界にいる期間)


ちなみに、 このプロセルピナの伝説は、ロセッティの私生活を暗示しているようにも見えます。
彼は、妻エリザベスと婚約中の頃から、このモデルの女性ジェーンと惹かれ合っていたと言います。しかも、そのジェーンは後に(ラファエル前派の)仲間であるウィリアム・モリスの妻となるのです。何とも見事な四角関係。
画中のジェーンが口にする禁断の果実は、何を示しているのでしょうか――

そして、ロセッティ夫妻の人生は彼女の出現により大きく変わることになり、ジェーン・モリスは「ファム・ファタール」(運命の女)と呼ばれるようになるのです。

CGFA
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DATE: 2009/03/11(水)   CATEGORY: ルネサンス
白貂を抱く婦人の肖像

レオナルド・ダ・ヴィンチ
「白貂を抱く婦人の肖像」(チェチリア・ガッレラーニの肖像)

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レオナルド・ダ・ヴィンチの完成された肖像画として有名な1点。
モデルはミラノ公ルドヴィーコ・イル・モーロの愛妾チェチリア・ガッレラーニ。ミラノ滞在時に描かれています。

白貂はギリシア語でガレ(galee)と言い、音が似ているガッレラーニ(Gallerani)を暗示しているそうです。
また、純潔のシンボルでもあるため、女性の肖像画にはピッタリでしょう。(白貂は汚れることを嫌って、1日に1度しか食事をしないという伝説があったらしい)

ちなみに大昔、白貂を最初「白ヒョウ」と読み間違えたことは秘密です。(物凄く危ないから・・・!!)

正しくは、テン。


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DATE: 2009/02/04(水)   CATEGORY: バロック
レースを編む女

ヨハネス・フェルメール「レースを編む女」

またしても更新の間が空いてしまいました。(汗)
今回は、フェルメールの「レースを編む女」。2月より開始するルーヴル展の目玉作品です。なので、一足早くこちらで紹介してみます。

熱心にレースを編む女性の姿が、映画のワンシーンを切り取ったかのように描かれています。そこにあるのは、レース糸のこすれるかすかな音さえも聞こえてきそうな、静謐さ。
緊張感を与えつつも、相変わらずの柔らかな光の表現によって、温かみすら感じます。

当時のオランダでは、レースを編む女性の勤勉さは「家庭の美徳」という意味を持っていたそうです。
隣の机に置かれた本も、聖書らしいと思われているそうですが・・・

しかしこの絵で真っ先に目を引くのは、そうした教訓めいた要素ではなく、女性が一心に見つめ、軽やかに動いているであろう華奢な指先だけなのです。


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DATE: 2009/01/01(木)   CATEGORY: バロック
エウロペの誘拐

レンブラント・ファン・レイン「エウロペの誘拐」
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皆様、明けましておめでとうございます。
新年第1回目の更新は、レンブラントとなりました。
・・・というか、単に「牛」だからなのですが。(苦笑)

牛と言えば牡牛座の元になったエウロペの伝説。
というわけで今回選択しました。


エウロペは地中海の東に暮らす美しき王女。
彼女を一目見て惚れ込んだゼウスは、怪しまれずに近づくために一計を案じます。
それが常套手段の「変身」。
白い牡牛の姿に変じたゼウスは、侍女と海岸で戯れていたエウロペの前に現れます。牡牛のおとなしい様子にすっかり安心したエウロペは、ついにその背に乗ってしまいます。
それが彼女の運の尽き。ゼウス牛は彼女を乗せたまま、猛スピードで海を渡り、クレタ島までやってきます。そこで彼女を手に入れたゼウスは三人の子をもうけました。
そしてエウロペは、後にその地でクレタ王妃となるのです・・・。

この時の牛の姿が天上に瞬く牡牛座となり、エウロペの名は欧州の大陸の名として残ることになったのです。

さて、このレンブラントの作品。左側の鬱蒼と茂った森は人間の住む地上世界、右側の光差す海は神々の暮らす天上世界を表しているのだそうです。
光と影の対比はいかにもレンブラントらしいです。


・・・新年から略奪話で良かったんでしょうか。(汗)
それはともかく(苦笑)、本年も当ブログをよろしくお願い致します。


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DATE: 2008/12/23(火)   CATEGORY: ルネサンス
聖ニコラウス伝

マサッチオ「聖ニコラウス伝」


聖ニコラウス――おそらく世界で最も親しまれている聖人。その別名は、サンタクロース。これはオランダ語の「シント・クラウス」が訛ったものと解釈されています。

聖ニコラウスのエピソードで有名なものは、まず「塩漬けにされた三人の子供を蘇生させた」というもの。そして次が、「貧しい三姉妹に黄金を与えて救った」というものです。子供を救い、プレゼントを与えたというエピソードが混じり、子供にプレゼントを配るサンタクロースが出来上がったと考えられています。

さて、今回ご紹介する作品は、まさに聖ニコラウスの贈り物のエピソードを描いたものです。
貧しい身なりの父親が横たわり、そのそばに悲嘆する三姉妹がうずくまっています。その様子を覗きながら、黄金の入った袋を投げ入れようとしているのが、まさに聖ニコラウスです。

煙突から投げ入れた、というのは恐らく後世の創作でしょう。窓から入れるほうが自然な行動だと思います。(苦笑)
娘たちは身売りする寸前まで追い込まれていたのですが、聖ニコラウスのお陰で後に幸せな結婚生活を送ることができたそうです。

派手な服装の陽気な爺さんのイメージが刷り込まれて久しいですが、時にはその原型となった人物像に思いを馳せてみるのも良いかもしれません。

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DATE: 2008/11/29(土)   CATEGORY: 美術展レビュー
ジョン・エヴァレット・ミレイ展


いったいいつの話なんだと言われそうですが・・・
先月に行ったミレイ展のレビューを今頃上げてみます。記憶がもっと薄れる前に・・・(汗)


ジョン・エヴァレット・ミレイはイギリス、ラファエル前派の画家。
11歳にして史上最年少でロイヤル・アカデミーに入学するという天才少年っぷりを発揮しますが、アカデミーの硬直した教育に嫌気が差し、美術界を改革すべく「ラファエル前派兄弟団」を結成します。
なぜラファエル(ラファエロの英語読み)が槍玉に挙げられたかというと・・・ロンドンのナショナル・ギャラリーが、ラファエロの「キリストの変容」の複製をずっと展示していたからだそうです。ラファエロ以降、美術が堕落していったのだというのが彼らの持論・・・。ラファエロの作品も好きな自分としては、複雑な気持ちですが。(苦笑)



参照:ラファエロ・サンツィオ「キリストの変容」
(この絵の何がいけないのか、自分にはわからないのですが・・・;)




「オフィーリア」
ミレイの作品で最も有名なのがこれ。
(印象派の)ミレーといえば「落ち穂拾い」、(ラファエル前派の)ミレイといえば「オフィーリア」が真っ先に挙げられるのではないでしょうか。
説明するまでもないとは思いますが、画題はシェイクスピアの『ハムレット』より、恋人に父親を殺され、錯乱して溺死した悲劇のヒロイン、オフィーリアです。

この絵を描くために、ミレイは浴槽をアトリエに持ち込み、モデルを何時間も水に漬けたままにしたのだそう。一応、ランプを下から照らして暖めていたみたいなのですが、それが消えてしまって水風呂に・・・
モデルは当然風邪を引き、父親が怒って医者代を払わせたとのことです。何してんだミレイ・・・

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