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DATE: 2008/07/06(日)   CATEGORY: 美術展レビュー
静物画の秘密展
2008年7月2日~9月15日、国立新美術館において「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展」が開かれております。
このたび当ブログに対し、こちらの展覧会のプレスプレビュー(内覧会)のお誘いを受けまして、管理人の代理としてちゅん吉さんに突撃レポートしていただくことになりました。

それでは以下、レポート記事になります。どうぞ。



『ウイーン美術史美術館 静物画の秘密展』
7月1日 火曜 13;30~14;45 プレスレビュー


7月1日、国立新美術館において『静物画の秘密展』のプレスレビューがあるとのことで、天球美術館管理人の千巻さんの代理として行ってまいりました。
当日は本当は休館日ということで、ちょっぴりガード固し。門にてお誘いのメールを印刷したものを見せて入館しました。

▲国立新美術館

この日は初日ですので、ゲストにウイーン美術史美術館の館長 ヴィルフリート・ザイペル氏、展覧会監修者の同館 副館長 カール・シュッツ氏と共立女子大学教授 木島俊介氏がいらしてて、ご挨拶を賜りました。 


なんでもウイーン美術史美術館の来館者の14%は日本人だとか。これにはちょっと驚きました。日本人、スゴイです・・・

今回は静物画というジャンルに絞った展覧会ということで、まず静物画とは何か?というお話をカール・シュッツ氏が語ってくださいました。

静物画というジャンル自体の成立はかなり遅く、17世紀にようやく定義が明確にされたようです。
静物画は英語では「still-life 」(独語;Stillleben 、蘭語;stilleben)と言い、、「静かにとどまっている、生きているもの、生き生きとした本物に見えるもの」、といった意味合いであります。
面白いのは、これにたいして、ラテン系の国々では同じジャンルの静物画に対し、仏語で「nature morte」、伊語で「natura morta」つまり「死せる自然」と真逆の言葉で表現していることです。

切り取られた自然の一部~それはすでに死んでいる~を、生き生きと描く絵と解釈しました。

どうもこの静物画、基本はvanitasの精神のようです。
まあ、私の勝手な解釈なのですが、キリスト教における空しさ、虚ろさを表しているようで。

これはたぶん、すべての現世の美しさ、楽しさ、栄華、権力は神の御前には無意味であり、称えられるべきはキリストの栄光である、という宗教観から来るvanitasではないか、って思います。


さて、展覧会は四つの章に分かれており、それぞれの章の代表的絵画をカール・シュッツ氏が解説してくださいました。

*第一章 市場・台所・虚栄(Vanitas)の静物



自然の恵みの集まるところ、市場。豊かな収穫物は市場から家庭へと運ばれます。
生命と豊かさの象徴として食卓をかざるこれらの恵み。
しかし、これらの豊かな物もやがて失われ、繁栄はいつか滅亡への道をたどるのです。

アントニオ・デ・ペレダ・イ・サルガド「静物:虚栄」


左手にカメオを持ち、右手で地球儀を指し示している天使の絵です。
カメオに描かれているのはハプスブルグ家のカール5世。地球儀で指し示しているのは日の没することなきその帝国。
しかし、この絵が描かれた1634年はカール5世の死からすでに70年がたっており、その帝国はすでに下り坂の時代です。
画面右側には富の象徴である金銀貨、首飾りがあるものの、左側には死と時間の空しさを象徴する髑髏と砂時計。栄華はいつか終わる、という現世の儚さを表した絵です。


▲ヴァニタスの説明をするカール・シュッツ氏

Vanitas は虚栄と訳されていますが、日本語の虚栄とはすこし違い、世俗的な名声、権力、財産、美しさなどは皆虚ろなものである、といった意味合いでしょう。


▲会場風景


*第二章 狩猟・果実・豪華な品々・花の静物



狩猟の獲物や見事な狩猟道具、食卓に置かれた様々なみずみずしい果実、珍しい花々、エキゾチックな美しい器物・・・静物画の確立した時期にオランダで盛んに描かれたこれらの絵は、国際貿易で成功したオランダの富を余すところなく伝えてくれます。
東インド会社が世界中からもたらした贅沢品ですね。


ヤン・ブリューゲル(父)「青い花瓶の花束」 


”花のブリューゲル”のあだ名がつくほど、静物画家としては花を多く描いた画家です。
この花の絵をよく見ると、時期の異なる花が一緒に花瓶に活けられています。つまり、別々にデッサンした絵を意識的に構成した絵なのですね。
こぼれおちた花や虫の死骸も描かれており、死すべきもののはかなさを象徴してます。
花瓶は中国の明時代のものです。

余談ですが、オランダは世界で一番最初にバブルを経験した国だとか。
チューリップの狂乱バブルのころは、球根一つがべらぼうな値段で取引され、俄か長者もずいぶん出たそうな。バブル崩壊後はオランダ人はケチの代名詞になったそうです。(go Dutch・・割り勘=自分の分は自分で払う)


*第三章 宗教・季節・自然と静物



四季や十二ヶ月を、それらを代表する花、神、動物を描くことで端的に表す手法は古代以来のもののようです。
中央のリュートを弾く若者は春を擬人化したヴィーナスの愛人としての軍神ではないかと思われてます。春を統べるのは音楽なので、様々な楽器が描かれてます。


*第四章 風俗・肖像と静物



風俗描写の中心はもちろん人の行いなのですが、その行為や性格を明確に意味付けるものとして衣装や持ち物(アトリビュート)が重要な役割を果たします。
神々や人物像に描き添えられるアトリビュートは、その主人公と不可分の関係を築き上げます。ヴィーナスの深紅の薔薇、聖母マリアの白百合などなど・・・


▲チモーネの説明をするカール・シュッツ氏

ルーベンスはこの絵をウイルデンスとスネイデルという二人の画家と共同で製作してます。背景はウイルデンス、右下のオナガザルと果物はスネイデルスが担当してます。
よく見ると、絵のタッチがかなり違います。
この絵はデカメロンを元に描かれてるということですが、ここに描かれた動物たちには次のような意味があるそうです。オウムと雉は貞節な愛の象徴、垂れ耳の犬は忠節を、オナガザルは愚かさとのこと。(絵全体としては少々とってつけたような静物に見えます・・)

さて、カール・シュッツ氏の最後の説明はこの展覧会の目玉ともいうべき、スペインの巨匠ベラスケスのマルガリータ王女の肖像画。



王女マルガリータ・テレサはスペインのフェリペ四世と、オーストリアのマリア・アンナとの間の最初の子どもであり、幼い時から叔父にあたるレオポルト一世との婚姻が決められてました。(近親結婚の複雑な家系図は、血の結束を固めた結果・・・・・遺伝的にはいかがなものでしょうか?)
ベラスケスはこの王女の絵を五つ描いてます。婚約者に捧げる肖像画として描かれていたということですが、この絵はそのもっとも早い時期、三歳の王女を描いたものです。


▲マルガリータ王女の絵の説明をするカール・シュッツ氏

薔薇色の緞子で袖口には黒いレースをあしらった豪奢なドレスを着た幼い女の子は、のちに四人の子どもを産んだ後22歳でこの世を去ります。
テーブルにおかれた花瓶には、名前を暗示するマーガレットが活けられています。

個人的感想です;この絵は暗い室内に浮かび上がるように艶やかな衣装の少女が描かれており、つややかな桃色の肌といい、ところどころ煌く衣装の筆致も素晴らしいです。
その割りには後ろのカーテンが雑なような気がするのですが・・・
手前の少女をひきたたせるためなのかもしれません。

さて、長々と駄文を書かせていただきましたが、今回はウイーン美術史美術館、副館長のカール・シュッツ氏の貴重なお話を伺うことができ、実り多い展覧会鑑賞となりました。

一見地味な「静物画」という分野がとても奥深く興味深いものであることがわかり、大変勉強になりました。

拙いレビューで申し訳ありませんが、この展覧会を見る方に少しでも参考になれば幸いと存じます。


文責 ちゅん吉@A月



ちゅん吉さん、レポートありがとうございました!
是非とも行ってみたくなりますね。管理人自身も会期中に足を運びたいと思います。
展覧会の公式サイトはこちらから。
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COMMENT

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● ありがとうございました!
ちゅん吉 | URL | 2008/07/06(日) 10:35 [EDIT]
早速のアップ、恐縮です。

ヴァニタスについては、もうちょっとつっこみたかったのですが、章にこだわって長くなってしまったため書きませんでした。
かなり独断的だし・・

ちまき師匠、貴重な機会をありがとうございました~
● 静物画の秘密展
Claude Monet | URL | 2008/07/06(日) 11:06 [EDIT]
僕も金曜日に早稲田の講義が講師の体調不良で急に急行になったので、行ってきました。これからブログも書こうとおもっているのですけれど、これを読んではなかなか書けないですね。すばらしいですよ。やはり、カタログを全部読んで書かないと対抗できませんね。僕もうんうんうなりながら書きますね。

管理人 | URL | 2008/07/06(日) 16:59 [EDIT]
>ちゅん吉さん
いえいえ、こちらこそ本当にありがとうございました。
そして、いろいろと勉強になりました。今回はいわゆる予習ですね。(笑)
丁寧なレポート、感謝しております!

>Claude Monetさん
さすが、ちゅん吉さんですね~。(^^)
Claude Monetさんのレビューも楽しみにしておりますね。

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