DATE: 2009/11/08(日)   CATEGORY: 美術展レビュー
THE ハプスブルク

先日は国立新美術館で開催中の「THE ハプスブルク」に行ってまいりました。
さすがは偉大なるハプスブルク王朝、所蔵作品に名を連ねる画家が見事にオールスターになっておりました。(笑)
今回ご紹介するのはその中のごく一部、自分の気になったものになります。



アンドレアス・メラー「11歳の女帝マリア・テレジア」

まずはこの作品。ハプスブルクといえばマリア・テレジアでしょう!ということで。
しかしこの絵が描かれた当時は、この後で激動の人生が待っているとも、16人の子供の母親になるとも、誰も知らなかったわけですよね。
ちなみにマリア・テレジアは、実際には「女帝」(皇帝)として即位したわけではなく、あくまで皇位は夫のもので、彼女は「皇后」だったそうですが……誰もが「女帝」と信じて疑いませんよね。(苦笑)
かくいう私もそうだと思っていました……



ティツィアーノ・ヴェチェリオ「イザベッラ・デステ」

まさかここでイザベッラに会えるとは……!!
望外のことに、思わず胸が高鳴りました。
イザベッラはフェラーラのエステ家の娘で、小国マントヴァに嫁ぎました。才色兼備で芸術を愛することで知られ、芸術家のパトロンとしても名を残しています。
ここでは可愛らしく描かれていますが、実際にはかなりのやり手で、夫が捕虜にされて命を脅かされても冷静さを失わず、放置プレイを貫いたという……(いや、実際にはそれも作戦だったみたいですが。しかし夫には恐れられてしまったらしい;)
ちょうど塩野七生さんの「ルネサンスの女たち」を読んだばかりだったので、とてもタイムリーでした。
なお、ダ・ヴィンチにも肖像画を依頼していたようですが、それはかなわなかったとのこと。観てみたかった……!


[ TB*0 | CO*0 ] page top
DATE: 2009/10/28(水)   CATEGORY: お知らせ
真珠の耳飾の少女、来日!
他の方の日記で知った情報ですが、嬉しさのあまり、ついここにも書いてしまいます。
美術作品の紹介記事でなくてスミマセン;;
(そして更新が絶えたままで本当に申し訳ないです)

何と!
フェルメールのあの「真珠の耳飾の少女」が来日するというのです!!



作品紹介はこちら

マウリッツハイス美術館には一生のうちに一度は行きたいと思っていましたが……
しかし国内にいてこの名画が拝めるとはッ! 生きていて良かったー!!
と、大げさに大喜びしてしまいました。

しかし、後で落ち着いてから調べてみたところ、開催は12年7〜12月とのこと。
3年も先なんですね……

それまでに何事もないことを切に、切に祈っています。
(※ガードナー美術館から盗まれたフェルメールの「合奏」はいまだに見つかっていない)

なお、朝日新聞の一面に載っていたということは、今回の主催は朝日なんでしょうね。
去年のフェルメール展の主催はTBSで、タイアップ番組がかなり微妙だったのが苦い記憶に残っておりますが……今回はもっと骨太な番組を期待したいところです。

なお、日曜洋画劇場では間違いなく「真珠の耳飾の少女」が放映されると思います。
真珠の耳飾りの少女
[ TB*0 | CO*2 ] page top
クラーク・サンダース


エリザベス・シダル「クラーク・サンダース」

エリザベス・シダルはラファエル前派の画家たちのために、幾度もモデルを務めました。
特に、ミレイの「オフィーリア」は有名です。

彼らラファエル前派の画家たちにとって、彼女はインスピレーションを与える「スタナー」(絶世の美女)となったのでした。
そんな彼女と恋に落ちたのが、ラファエル前派の創設者の一人、ロセッティでした。彼はエリザベスを自邸に住まわせ、自ら詩や絵の手ほどきをしました。

当時、エリザベスの作品はなかなか評判も良かったようで、最近になってからも再評価されてきています。

この作品は、「アイヴァンホー」などで有名なウォルター・スコットが編集したバラッド集を元に描かれています。
クラーク・サンダースは恋人マーガレットの兄弟に殺されてしまい、幽霊となって彼女の元を訪れているのです。

仲睦まじい恋人時代に描いた作品にしては、主題も雰囲気もずいぶん暗いようにも感じられます。後のエリザベスの人生を思うと、すでに前兆が表れているような気もしてきます。
結婚後の彼女の生活は、失意と絶望へと突き進むことになったのです。
[ TB*0 | CO*0 ] page top
DATE: 2009/07/27(月)   CATEGORY: 美術展レビュー
フランス絵画の19世紀(2)
引き続き、「フランス絵画の19世紀」レビューです。
前の記事はこちら



レオン・コニエ「死せる娘を描くティントレット」

ティントレットはルネサンス期、ヴェネツィア派の巨匠。本名はヤーコポ・ロブスティですが、家が染物屋だったため、ティントレット(染物屋の息子)と呼ばれるようになったそうです。

さて、ここに描かれているのはそのかつての巨匠の深い悲しみの様子。
自分の弟子でもあった娘マリアを若くして亡くしてしまった巨匠。彼はその亡骸を前に、絵筆を取っています。最期の姿をこの世にとどめるために……

光と闇の表現は、バロック期の手法を髣髴させます。
なお、ティントレットの顔は、ルーヴル美術館所蔵の自画像を元に描いたとのこと。そんなわけで、画像を探してきました。


うん、確かに似てる……ていうかそのものだね。(汗)
なお、この自画像は娘が亡くなる1年前に描かれたものです。




アンリ・レーマン「預言者エレミヤ」

こちらは旧約聖書「エレミヤ書」より。
預言者エレミヤは「災いが来る」と告げますが、それによって牢に繋がれてしまいます。彼の言葉は書記バルクが口述筆記していたということから、左側には青年姿のバルクが描かれています。
エレミヤの背後の天使はエルサレムの方角を指差し、この都を破壊すると威嚇しているのだそうです。そのためか、表情も大変険しいです。

しかし何より目を引くのがエレミヤの姿。苦渋にまみれながらも、その瞳には強い意志がうかがえます。
ところで図録の解説には「手を支えにして痩せた体を起こしている」と書かれているのですが……かなり筋肉むきむきで、とても痩せ衰えているようには見えないのですが……?(汗)
[ TB*0 | CO*2 ] page top
DATE: 2009/07/27(月)   CATEGORY: 美術展レビュー
フランス絵画の19世紀


先日の連休に行ってまいりました。
横浜美術館で開催中の「フランス絵画の19世紀」。

連休に加え、夏休みスタートだというにも関わらず、かなり空いていてびっくりしました。
まあ、確かにあまり日本では有名な作品は来ていなかったので、注目度が低いということもあるでしょうけれど……
でもそのお陰で、充分楽しむことが出来ました。感謝。


今回の中心となるのが、「アカデミズム」。
ダヴィット、アングル、ドラロッシュというお歴々の名が示すとおり、アカデミーの優秀な作品群が集結しました。

19世紀というくくりなので、新古典主義からロマン派、印象派へと流れてゆくわけなんですが、アカデミーな作品好きの管理人はそちらを中心に語ります。(苦笑)



ミシェル=マルタン・ドロリング「アキレウスの怒り」

まずはローマ賞受賞作からスタート。
今回の図録にローマ賞について説明がありましたので、一部紹介致します。

「ローマ賞」とは王立アカデミーにおける、権威ある選抜制度。当時、絵画ジャンルの中で最高ランクにおかれていた「歴史画」がテーマです。
まず一次試験では、宗教史・古代史・神話などに基づく特定のテーマで下絵を描きます。
二次試験では、外部の助けを借りずに一人で絵画作品を完成させます。
合格者は官費で数年間、ローマにあるフランス・アカデミーに留学することができました。
なんとも豪華な賞ですね。しかし、受賞しても鳴かず飛ばずで終わってしまう画家もいたようで……これは現代の各賞やコンクールと似たようなものですね。(苦笑)

さて上の作品ですが、タイトルは「アキレウスの怒り」。
ご存知、トロイア戦争から取られています。
自分の恋人であるブリセイスを奪い取ったアガメムノン(トロイア侵攻連合軍の総大将。アキレウスにしてみれば上司)を殺そうとしているところです。
もちろん、いさめられて未遂に終わるのですが……
上空からアキレウスを止めようとしているのは、女神アテナ。
トロイア戦争は、同時に神々同士の対立でもあり、アテナはギリシア側についているのです。確かに、総大将が殺されたらえらいことですからね……。アキレウスも無事では済まないし、そうなると一気に連合軍はガタガタになるでしょうから。(汗)

作品自体は、さすがはアカデミズム、なめらかな肢体の表現は見事と惚れ惚れしました。
アガメムノンがイメージよりもだいぶ若い気もしますが、やはり肉体の表現上、若返させられたのかなと思います。



アリ・シェフェール「糸巻のマルガレーテ」

通りかかると思わず足を止めざるを得ない、そんな雰囲気を持った作品です。
題材はゲーテの「ファウスト」より。

マルガレーテ、通称グレートヒェンは無垢で純真な信心深い娘。しかしファウストとの恋により、絶望の底に突き落とされる。
母親も兄もファウストに殺され、さらに彼が去った後で婚外子を産み、持て余した末に子供を沼に沈めてしまう。そうして彼女は婚前交渉および嬰児殺しで死罪を宣告され、処刑されてしまう――

どこまで不幸なんだと言いたくなるマルガレーテですが、最後まで信仰を捨てることはありませんでした。

幸薄い表情ながら、どこか落ち着いて見えるのは、その厚い信仰心ゆえでしょうか……。
[ TB*0 | CO*0 ] page top
DATE: 2009/07/11(土)   CATEGORY: 美術展レビュー
奇想の王国 だまし絵展


レビューを上げるのが大変遅くなってしまいました。
それでも記憶がすっかり抜け落ちる前に載せようと思います。(汗)

今回は「だまし絵」ということで、予備知識なしでも割りと気軽に楽しめる展覧会になっていたのではないかと思います。
平日の昼間に行ったのですが、その割には若い世代が多めな感じでした。


まずはこちら。
本邦初公開、アルチンボルドのルドルフ2世です。


ジュゼッペ・アルチンボルド「ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)」

ウェルトゥムヌスとは果樹園をつかさどるローマ神話の神。その神に、時の皇帝ルドルフ2世をなぞらえたわけですが……
なぞらえるというか、果実そのものにしてしまうところが凄いですよね……(汗)

今の感覚で見てしまうと、「へぇ〜凄いな〜」くらいに思えてしまうかもしれませんが、当時(16世紀末)の人は本気で度肝抜かれたんじゃないかと思います。まるで現代アートの感覚ですよね。こういう人が本物の天才とか鬼才とか言うんじゃないでしょうか……。
そして、こういうのを面白がって重用して、もりもり描かせたルドルフ2世も只者じゃないですよね。頭の固い君主なら「けしからん!」とか言うかもしれませんし。



デ・スコット・エヴァンズ「インコへのオマージュ」

今回の展覧会で一番多いと感じたのが、このパターン。
これは割れたガラスを本物っぽく見せています。壁に貼られた本物のリボンや手紙や額に見せかけた絵、という、だまし絵が多めでしたね。
こういうのを「トロンプルイユ」と呼ぶのだそうです。ただ、この手のものは、ずらっと似たようなパターンを並べてしまうと、やや興ざめな感もあります。普通の絵の中に時々「あれ?」と思わせないと、効果が半減してしまうような。
[ TB*0 | CO*3 ] page top
聖母マリアの少女時代

ダンテ・ガブリエル・ロセッティ「聖母マリアの少女時代」
大きい画像はこちら


1849年、ロンドンのハイド・パーク・コーナーの無料展に、この作品が初めて公開されました。
絵のモデルは、母親と妹であったといいます。写実的な表現は、どこか古めかしく、ルネサンス時代の雰囲気を思い起こさせます。

また、画中にはたくさんの「お約束」が、これでもかと描き込まれています。

茨は、迫害されたキリストがかぶせられた冠。
棕櫚(しゅろ)は、殉教した聖人のシンボル。
さらには十字架と赤い布。
これらはすべて、キリストの受難を表します。

窓の外の鳩。これは三位一体の「父と子と聖霊」の聖霊を示します。

さらには百合。これが、この作品で最も重要なアイテムになります。
百合は純潔のしるし。多くの「受胎告知」でも、マリアが処女懐胎をしたという意味を持たせるため、画中に百合を描いています。

この作品では、少女時代のマリアを表すために描かれています。手にしているのは、恐らく大天使ガブリエルでしょう。くしくも、ロセッティ自身と同じ名の。


なお、この作品には密かに「P.R.B」という文字が書き込まれていました。
これは、当時はまだその意味を明かしていなかった、「ラファエル前派」の頭文字だったのです。その後、ロセッティたちは美術界を改めようと新風を巻き起こすのです。


CGFA
[ TB*0 | CO*0 ] page top
copyright © 天球美術館 all rights reserved.powered by FC2ブログ.  template by レトロメカニカ. ページの先頭へ